中国は広州のアイドル事情を、少しばかり体験しつつもなんとなく探ってみた!!



 広州で夏と年末年始に定期開催中、アニメ/ゲームの祭典「蛍火虫」。今回、その中で日本のアイドルたちを招聘し、中国で活動しているアイドルたちと共演するイベントを行うことから、みのりほのか/愛夢GLTOKYOチームに帯同。現地のアイドル事情を探ってきた。
今回のイベントには、先に触れたみのりほのかと愛夢GLTOKYO、初日のみだが日本からDREAMING MONSTERも参加。中国側からは、香港をベースに活動しているAriel projectとERЯOR、広州を拠点にしているArgo Angelsと計6組が参加。
 彼女たちは3日間、特設ステージでライブを実施。加えて、巨大な会場に設置したメインステージとサブステージにも登場。とくにメインステージは開催時間中ずっとネットで生中継を行っており、ピーク時で100万人を越す視聴者が現地の様子を観ていたらしい。
 日本で言うコミケにも似たイベントのように、アニメやゲーム関連の企業ブースが場内にはズラッと並んでいた(日本と違い非公式な同人系は基本的にNGらしい)。巨大な2つの空間を用意したにも関わらず、ピーク時は満員電車状態で歩くのにもひと苦労だったように、日本で言うヲタク文化に興味関心を示す人たちはとても多い状況を実感。むしろ、日本のようにマイノリティな文化ではなく、中国(とくに香港・上海、広州・深圳などの辺り)ではそれがポピュラーな文化として認知されているようだ。
個人的には、ヲタ芸の技を競い合うイベントがとても興味深かった。使う楽曲も、日本のボカロ曲(や一部J-POPナンバー)が中心。それは、他の歌のイベントでも同じ傾向が見受けられた。中では、「ラブライブ!」のコンサートを模倣した?イベントも行われており、日本と同じ熱狂ぶりを描き出していた。

ここからは中国は広州など南東部のアイドル事情について述べたい。中国のアイドルファンたちと日本のファンとの違いは何か…。それが、何も変わらないと言ったほうが正解だろう。さすがに、日本のファンたちのように過激に騒ぐ人たちは見かけなかったが、Mixやコールを入れるのは日本と何も変わらず。むしろ、日本に於けるアイドルライブの楽しみ方を模倣しては、それを中国のアイドルたちへ投影している傾向があった。
アイドルたちも、日本のアイドルソングのカバーはもちろん、あえて日本語を用いたオリジナル楽曲を歌うなど、日本のアイドルの姿を模倣してはアレンジを加えながら投影している傾向が強かった。とくに香港や上海などではその意識が強く、今回ライブに触れた香港で活動しているAriel ProjectやERЯORは日本のアイドルソングのカバーはもちろん、あえて日本語でオリジナル曲を歌うスタイルを取っていたように、日本のアイドルシーンをオマージュする意識も高そうだ。
話は脇道へ逸れるが、台湾で地元のアイドルグループを観たときも、日本語で歌えば、MCも日本語を用いていたように、アジア諸国で芽吹き出したアイドル文化が同じような傾向で広がり出しているのがとても興味深い。この辺は、改めて調べたいところだ。
今回「蛍火虫」の中へイベントブースを設置し、日本からアイドルたちを招聘した広州の会社「星鹿互娯」でも、現在Argo Angelsというアイドルグループを立ち上げ、広州にもアイドル文化を芽吹かせようと頑張っている。Argo Angelsの特徴が、すべて中国語で歌っていること。広州で活動しているのだから当たり前と思うだろうが、中国のアイドルたちに関しては、日本からも気軽にアクセス出来るtwitterでは日本語を用いることも多い。Argo Angelsのメンバーたちも、twitterでは日本語を用いることもある。とはいえ、「星鹿互娯」でArgo Angelsを手がけるプロデューサーのRenzie Ping氏は、「日本のアイドル文化からの影響を受けてアイドルやアイドル事業を始めてはいるが、中国でアイドル文化を発展させるには、模倣ではなく独自の文化に育てねば意味がない。加えて、まだまだアイドル文化が未発達な広州にアイドル文化を根付かせるためにも、我々は中国語で歌うアイドルたちを育てあげねばならない。アイドルはコミュニケーション文化でもあるように、直接触れ合う意味でも母国語で歌うのは当たり前のこと」と語ってくれた。
今、中国南東部で活動しているアイドルたちは、AKB48に影響を受けて自分もアイドルになろうと決意した人たちがとても多い。そんな彼女たちを支えているスタッフたちは、モーニング娘。などに影響を受け、自国でもアイドル文化を作りたいとの思いから始めた人たちが、今は中心になっている。
こと、広州に関して言えば、Argo Angelsを筆頭にアイドル活動をしている人たちは10組強というように、本当に限られている。言うなれば、ABK48が生まれる以前の、お店のシャッターが降りた夜の秋葉原で路上ライブをやったり、ライブも出来るスペースで小さなイベントを企画したり、四谷のライブハウスに身を寄せていた頃のような、地下アイドルという言葉はあっても、その言葉自体が認知もされていない、日本に於ける地下アイドル黎明期のような頃と似たような環境だ。
今の広州のアイドルシーンが、延いては中国のアイドルシーンが熱く盛り上がっているかと言えば、今は、その火種を仕込んでいる時期と言えようか。Argo Angelsを手がけるRenzie Ping氏も、「Argo Angelsで市場の認知をつかみ、そこから新しくアイドルを目指す人たちと、彼女たちと一緒に成長したいファンたちを増やしながら、広州にアイドル文化を根付かせたい。もちろん、その熱を香港や上海に、さらには中国全土や日本にだって広げられたら」と語っていた。別の捉え方をするなら、広州はアイドル文化が未発達の地域だからこそ、どんな風に文化が生育してゆくのかに強く惹かれてゆく。
今回は、みのりほのかや愛夢GLTOKYOに帯同していたことから、じっくりと中国のアイドル事情を探るまではいかなかったが、改めて、そこは深く調べたいし、可能なら、広州でどのようにアイドル文化が成長してゆくのかも見ていきたい気持ちもある。

最後に、イベント中の忙しい最中、短い時間だが取材に応じてくれた「星鹿互娯」でArgo Angelsを手がけるプロデューサーのRenzie Ping氏のミニインタヴューも、参考として記しておこう。

広州、延いては中国のアイドル事情を現地のプロデューサーが語る!!

──中国でも、今やアニメやゲームは巨大な市場として広がっています。でも、アイドル事業はまだまだ小規模。まして広州には、アイドルがほとんどいません。なのに、なぜアイドル事業を始めたのでしょうか?
「自分は、アイドルを通して感動やコミュニケーションを描き出す演出が好きなんです。確かに今の中国は、アニメやゲームが文化の主流の一つになりつつありますが、中国のアイドル事業や文化はまだまだ始まったばかりです。だけどそれは10年前、いや15年くらい前頃に中国にアニメやゲームの文化が広がり始めたときと似たような環境。だからこそ自分たちが、中国におけるアイドル文化の基盤を作っていきたい。とくに広州は、アイドル文化未開拓の地。広州で始まりの文化を作りながら、僕らが、将来的にアイドル文化を広げてゆくための力になりたい。そう思い、アイドル事業を始めました」
──そもそも、なぜアイドルに興味を持ったのでしょうか?
「きっかけは、10代の学生時代にモーニング娘。に出会ったことでした。そこからアイドルに興味を持ち始めれば、大学時代にはAKB48に大きな影響を受け、その頃から自分でも何時か自国の、しかも生まれ育った広州にアイドルたちを根付かせたいと思うようになりました」
──中国全土に、どのくらいアイドルの数は存在しているのでしょうか?
「中国でアイドル支持といえば、一般的には韓国系アイドルたちのことを指しています。いわゆる、日本でいうアイドルの支持はとても少ないように、活動している人たちもまだまだ数は少ないと思います。ただし、中国でも南東部は日本のアイドル支持や興味関心が比較的高い地域。それは、広州に於いても同じこと。だからこそ、地元である広州からしっかりアイドル市場を開拓していこうと僕らは思っています」
──日本語で歌うアイドルが多い中、Argo Angelsは中国語にこだわっています。その理由も教えてください。
「今の中国に於けるアイドル文化は、日本で行っているスタイルをストレートに導入しながら、そこへ自分たちのオリジナリティを加えようとしているのが大半です。でも、みんながみんな日本語を理解しているわけでもなければ、それは歌う側にだって言えること。
僕らも、ベーシックには日本のアイドル文化の影響はあります。ただ、中国でアイドル文化を広げるなら母国語で、しかも、中国の人たちにも理解しやすい形で独自のスタイルに昇華してゆく必要性があります。実際Argo Angelsが中国語で歌うことで、ファンたちも親しみを持ってくれます。だからこそ、Argo Angelsは最初から中国語にこだわってきました。実際のところ、広州の人たちは日本語がわかりません。だったら、わかる言葉で歌うのが正解じゃないですか。ましてアイドルは、笑顔と元気と活発さが一番大事。それをしっかり伝えるうえでも、僕らは当たり前のアプローチをしています」
――Renzie Ping氏の野望も、ぜひ聞かせてください。
「まずは、広州にアイドルたちが育成発展してゆく環境を芽吹かせたい。もっと簡単に言うなら、活動しやすい土壌やシステムを作り、もっと大勢の人たちがアイドルを始めやすい環境作りを行えば、一般の人たちがファンになりやすい雰囲気を作りたいなと思っています。そのうえで、まずはArgo Angelsが大きな会場でワンマン公演ができるまでの規模に発展させたい。
とくに香港などのアイドルグループたちが、日本のアイドルたちの影響を強く受けては、それを発信してゆく傾向が強いからこそ、僕らは広州から発信する中国ならではのアイドルグループとして、その魅力をまずは広州中に。そのうえで香港や上海、深圳などに。さらには中国本土中や日本を含む海外にまで発信していけたらという野望を持って、今は活動をしています」

TEXT:長澤智典

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