Shusei’s Project、リーダーのShuseiと歌姫として参加した2人の声優、雅絢恵と相馬優が壮大な「夢」の物語を全曲解説!!


日本のプログレッシブロック界を代表するバンド「アウターリミッツ」「ヴィエナ」のキーボディストであり、作曲家/編曲家としてLOUDNESSの二井原実やX JAPANのTOSHI、GACKTとも作品をコラボレート。近年では、アニメ「だんちがい」や「おじさんとマシュマロ」の劇伴やテーマ曲なども手がけているShuseiこと塚本周成。
彼が、このたびシンフォニックロック・プロジェクト”Shusei’s Project”を立ち上げ、ストレンジでファンタジックな音絵巻『Same Dreamer』を制作。Shuseiは二人の歌姫として、劇場盤アニメ「カゲロウデイズ-in a day’s-」やラジオドラマ「VIOLATOR~月光大戦~」のアヤ少尉、パチンコ「CR聖戦士ダンバイン」で流れる『Aura eyse』の歌を担当した声優の雅絢恵。アニメ「ミリタリ!」「ただういてるだけのものたち」、ゲーム「ヒーローズプレイスメント」や「ヴァリアントナイツ」で声優として出演している相馬優を起用。Shuseiの創り上げた壮大かつ幻想的な音が彩る不思議の国の中で起こる七編の物語(内、1曲はインスト) を、語り部となった二人が情感たっぷりに歌いあげた。

アルバム『Same Dreamer』の特色は、収録した7曲それぞれが異なる「夢の物語」を描きながら、曲順通りに聴くと、連綿と連なる一つの壮大な人間ドラマとして見えてゆくこと。この度、Shusei/雅絢恵/相馬優の3人が、アルバム『Same Dreamer』に収録した楽曲の魅力を一曲ずつ紐解いた。

『夢』

Shusei 冒頭を飾った『夢』は、微睡みの中へ不思議な光景を目にしてゆく様から物語が始まります。楽曲もゆっくりと、でも次第に壮麗で幻想的な音色を波紋のように広げてゆく。この『夢』を歌ったのが、雅絢恵さん。彼女は声優ですけど、もともと音大の声楽科出身。ロックな世界観をパワフルに歌いあげたように、そこは予想していた以上の嬉しい驚きでしたね。
雅絢恵 冒頭を飾った『夢』は、ゆったりとした幻想的な楽曲。しかも、これから始まるいろんな物語への導入部にもなるよう歌うときにも明確な心証を与えるのではなく、その言葉を受け止めた人なりに自由に解釈の広がってゆく歌い方を心がけました。聴いた方も「この主人公は目的を持って何処かを目指しているのか、それとも逃亡の旅なのか!?」といろんなイメージを抱けば、「一体ここから何が始まるんだろう!?」とジャケットを観ながら想像を膨らませてゆくと思います。

『Same Dreamer』

Shusei 大きなウネリを作りあげるように、この楽曲はシンフォニック/ハード/ブログレッシブな世界観を描き出してゆく。『Same Dreamer』は、アルバムの中、唯一のインスト曲。ここからドラマは一気に躍動します。とはいえ、歌を軸にした物語へいきなり導くよりも、インストゥルメンタルを入れることによって、より「夢」への想像を掻き立てやすくしていった。別の捉え方をするなら、歌のない演奏だけでも「夢」という物語は十分に語り尽くせることを、この楽曲を通して知らしめたかったんです。

『Border』

雅絢恵 『Same Dreamer』で感情が熱を帯びた中へ、秘めた力を抱いた哀愁ドラマチックな『Border』が流れます。曲調的には雄大なバラード。歌声には、とにかく力強さを求められました。その力強い歌声の中へ、どんどん感情が光を帯びてゆく様も感じていただけたら嬉しいです。
歌詞では、この時代に生まれた意味とは何か!?を、満ちた光と、その対極にある影を投影しながら歌いました。

『Black Card』

相馬優 物語が進むごとに次々と楽曲もドラマチックに転調。派手な演奏が飛び交うカラフルでパーティなムードを抱いた『Black Card』は、ビジネスで大きな成功を手にした人の歌になります。
ブランドのドレスを着て高級車に乗ってパーティへ行くなんて、まさに夢のような世界。派手なパーティの模様を歌いながら、でも最後に「ところで、さっきから夢って何の話なの?」と主人公の女性が言いますよね。私、「そこ、どういう意味だろう」とずっと気になっているんです。
Shusei 夢って、みんながみんなずっと見れるものではない。『Black Card』に出てくる調子に乗った女性は、けっして「特別に選ばれた人」でもない。もしかしたらその女性は、これから詐欺にあって夢を終えてしまうかも知れない(笑)。この歌に限らず、どの歌詞も裏に隠したメッセージまで汲み取ってもらえたら嬉しいけどね。『Black Card』で彼女(相馬優)は、ズッとハイトーンの声で押し切るように歌いました。あえて高いキーも地声で歌わせたのは、この楽曲に歌声でもパンチを出したかったからなんです。結果,演奏と合い重なるように力強い歌声が楽曲に反映されたからね。

『戦いの中で』

Shusei 勇壮で激しい、まさに熾烈な戦いの様を投影した『戦いの中で』でも相馬さんの歌声は、かなり雄々しく勇壮にせまったね。この楽曲では、今の時代に相応しい進化(プログレス)したブログレッシブロックの神髄を発揮。リスナーたちへプログレッシブロックの魅力を伝えるのと同時に、表現してゆく側にも「つねに進化を続けることがプログレッシブロックなんだ」という意識を示す曲にもしています。
相馬優 こちらもパンチ力を必要とする歌でした。愛するこの国と家族を守るために命を捧げる戦いを繰り広げながらも、希望があるからこそ次の世代へ命を繋いでゆける。その意志に、このアルバムのテーマも重ね合わせていました。

『最後の言葉』

Shusei クライマックスへ向かう前に流れるのが、とても穏やかな、でも物悲しさを秘めた『最後の言葉』になります。歌詞に「病に倒れ もう長くはない」と歌いながら大切な人との人生の終焉の時期を過ごす日々の想いを描写。ここにも、「夢」や連綿と続く「命の連なり」を覚えてもらえるはずです。
 曲調は、ディナーで言うフルコースのメニューの中、メインディッシュの前に口直しの逸品が出てくる感じと言えば良いかな!?。小さな教会にあるパイプオルガンの音色に乗せ、彼女(雅絢恵)に歌ってもらったんだけど。これは一切リズムの無い楽曲。ピアノの伴奏のみで歌う声楽の経験を積み重ねてきたからこそ表現出来た歌だなと思ってる。
雅絢恵 クライマックスへ向けた物語の中『最後の言葉』が入ることで雰囲気を変えていけたように、アルバムの流れへとても良い印象を与えるなと思いました。

『夢の始まり』

相馬優 心を開放し宴に酔いしれる勇者たちの姿を投影した『夢の始まり』は、アルバムの中へ連綿と綴った「夢」の種明かしと言いますか、明るく楽しい宴の様を伝えつつ、最後の最後にアッと驚く展開を見せる楽曲になりました。
Shusei 『夢の始まり』は、まさにファンタジックな物語。いろんな村から何千人という人たちが集まり、宴を通して心を交わしながら、共に北へ向かって旅をしてゆく。旅の道中、猛獣と戦えば、大自然の驚異にさらされ、時には病気や怪我で仲間を失い、それでも何年もかけ理想郷までみんなで旅をしていく。でも、最後に目の前へ広がったのは…という、まるでスペクタクルな映画のような物語ですからね。どういう大どんでん返しが起きるかは聴いてくれた人たちの楽しみにしておきますが。ここでは「我々の命も、長い人の歴史という旅の中で受け継がれている」ことを示したかった。聴くときはあまり重く考えず、宴の様から物語が始まるように楽しんでいただければそれでいいんですけど。それぞれの楽曲へ深く踏み込んだとき、そこからどんな心理が見えてくるのかを『Same Dreamer』というアルバムで感じてもらえたらなと思っています。

 根っからのプログレッシブロック好きなもちろん、シンフォニック/クラシカルなアニメやゲーム音楽に心地好さを覚える人たちはぜひ耳にしていただきたい。ここには、触れた人のイマジネーションを熱く掻き立ててゆくドラマが生きている。何よりも、映像に頼らないイマジネーションミュージックの醍醐味を、この作品に覚えられるはずだ。

TEXT:長澤智典
PHOTO:橋本美波(取材風景)

王様ロック Web 
http://kings-rock.jp/
雅絢恵 twitter
https://twitter.com/AyaE_0421
相馬優 twitter
https://twitter.com/soumayuu

★CD情報★

Shusei’s Project
『Same Dreamer』
2017年03月08日 リリース
KICS-3473
¥3,000 + 税 KING e-SHOP

ジャパニーズ・プログレッシヴ・ロックを代表するアウター・リミッツやヴィエナに在籍していたキーボーディスト兼作曲家Shusei(塚本周成)と女性声優陣がコラボレーションしたシンフォニック・ロック・プロジェクト。

TRACK LIST
01.夢
02.Same Dreamer
03.Border
04.Black Card
05.戦いの中で
06.最後の言葉
07.夢の始まり

All Songwriting And Arrangements by Shusei

★映像★
http://kings-rock.jp/movie/2017/01/shuseis-project.php


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